胎児認知という言葉は、なかなか知られていない言葉かもしれません。
なぜなら、結婚している男女の間に産まれてきた子どもを胎児認知する必要はないからです。
一方、未婚の母が子どもを出産した場合、胎児認知か出生後の認知をしてもらわなければ子どもの戸籍上では父親が存在しないことになってしまいます。
- 胎児認知ってなに?必要性は?
- 胎児認知のデメリットは?
- 胎児認知の手続き方法は?
という内容を知りたい方は、ぜひ最後までこの記事を参考にして胎児認知に関してさまざまなことを知っていただきたいです。

私は胎児認知をしてもらえなかった未婚シンママですが、他の未婚シンママさんたちは意外と胎児認知をしてもらっているようです。経験談から胎児認知に関することをお伝えしていきます。
胎児認知とは?

未婚で子どもを出産する場合、認知をしてもらわなければ法律上父親が明らかにならない状態になっていまいます。
そこで子父に認知をしてもらう手段として、胎児認知というものが存在するのです。
胎児認知は、文字通りに子どもがお母さんのお腹にいる胎児の段階に、胎児の父親に認知をしてもらうことを指します。

未婚で妊娠した場合、子の父親である男性に胎児の段階で認知をしてもらうことで出産してからの手続きがスムーズになります。
胎児認知はいつから可能?
胎児認知が可能な期間に規定はありませんが、赤ちゃんが胎児の状態でお腹にいる間に認知をしてもらう必要があります。
妊娠の事実がわかってすぐ~赤ちゃんが誕生するまでが胎児認知可能な期間です。
とはいえ、妊娠検査薬の結果だけでは不安ですから、産婦人科などで心拍の確認がとれてから(妊娠8週目以降)に認知届を提出するのが一般的。
産婦人科で妊娠していることが確実になり、母子手帳をもらった段階で相手に胎児認知をお願いするのが自然な流れでしょう。
胎児認知は未婚の母ならしてもらうべき?
胎児認知は、未婚の母ならばしてもらった方がいいでしょう。
ただし、子父が胎児認知をする意思があるケースのみ。
なぜなら子どもが産まれてからしてもらう認知とは違い、胎児認知は子父に胎児認知をする意思がなければしてもらうことができません。

出生前DNA鑑定で親子関係が認められても、子父が胎児認知を拒否するならば認知してもらうことができない仕組みです。
胎児認知を拒否されている場合は、無理に胎児認知をしてもらわない方がいいケースもあります。
その理由は後程お伝えしていくので、ぜひ胎児認知に関して知りたい方は最後までお付き合いください。
胎児認知6つのメリット
胎児認知のメリットは、主に6つあります。
- 胎児の時点で父親と親子関係が法的に認められる
- 出生届に父親の名前を書くことができる
- 出産後すぐに養育費を請求できる
- 胎児が出生する前に父親が亡くなった場合、胎児は父親の財産を相続する権利が生じる
- 精神的に安心できる
- 日本国籍が取得できる
胎児の時点で親子関係が法的に認められる
胎児認知をしてもらうと、法的に親子関係が認められ父親はその子を扶養する義務を負うことになります。
扶養(ふよう)は、老幼、心身の障害、疾病、貧困、失業などの理由により自己の労働が困難でかつ資産が十分でないために独立して生計を営めない者(要扶助者)の生活を他者が援助すること。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
お金の面では、子どもが産まれたらすぐに養育費の支払い義務が発生するので、請求することができます。
心の面に関しては、妊娠中は不安定になりがちなので、胎児認知をしてもらうことで法的にも父親が明確になり、安心感を得られるメリットがあるでしょう。
出生届に父親の名前を書くことができる
胎児認知をしてもらった場合、出生時に父親の名前を書いて出生届を提出することができます。
出生届を提出し、子どもの戸籍が作成された時点で父親の戸籍にも認知の事実が記載されます。
養育費をすぐに請求できる
先ほどもお伝えしたように、胎児認知をしてもらうと親子関係が法的に認められて負債義務出生月から養育費を請求することが可能です。
一方で、胎児認知をしてもらえなかった場合は養育費をすぐに請求できません。
父親が胎児認知を拒む場合は、残念ながらDNA鑑定などで化学的に親子関係を証明できないため、胎児認知調停を申し立てても成立しないことがほとんど。

出生前DNA鑑定という方法もありますが、親子関係が認められない結果となることもあるようです。結局子どもが産まれてからDNA鑑定をし直していたので、お金がもったいなかったという実話を聞きました。
胎児認知をしてもらえない場合は、子どもが産まれてから家庭裁判へ認知調停を申し立て、DNA鑑定などを実施して親子関係を法的に認めてもらう必要があります。
そして認知調停がスムーズにいかない場合は、認知をしてもらうだけでも半年以上かかってしまう恐れがあります。
そうなると養育費を請求するまでの期間が空いてしまうのです。

胎児認知をしてくれる男性は少ないかもしれませんが、相手がしてくれるというのなら、胎児認知をしてもらった方が後々スムーズに進みます。
財産を相続する権利が生じる
胎児の段階で、父親との親子関係を法的に認めてもらえると、仮に胎児が出生する前に父親が亡くなった場合でも、胎児は父親の財産を相続する権利が生じます。
精神的に安心できる
胎児認知をしてもらうことで、父親が法的にも明確になり、養育費の請求ができることになります。
ですから、精神的に不安定になりがちな妊娠中でも、子の父親に認知してもらったことが安定に繋がることもあるでしょう。
逆に、胎児認知を望んでいるのにも関わらず、胎児認知を拒否された場合は精神的に辛くなってしまうこともあります。

私の経験上、胎児認知を拒否して逃げている相手ならば、無理やり胎児認知をしてもらうメリットはありません。子どもが産まれてからDNA鑑定を通じて認知してもらいましょう。
日本国籍が取得できる
外国人女性が日本で出産する場合、日本国籍の男性と婚姻をしていないと、生まれた子どもは外国人として出生届を提出することになってしまいます。
しかし胎児認知をしてもらうことで、出生と同時に日本国籍の男性との間に法律上の親子関係が認められます。
胎児認知3つのデメリット
胎児認知をしてもらうデメリットは基本的にありませんが、子の父親の立場によっては、デメリットになり得ることも考えられます。
- 子の父親が犯罪者である場合
- 子の父親に多額の借金がある場合
- 子の父親が既婚者の場合
子の父親が犯罪者である場合
子の父親が犯罪者である場合は、その子に罪はなくても、犯罪者の子供というだけで生きにくくなるかもしれませんし、イジメられる可能性もあります。
その子自身も、親が犯罪者だとしったらショックを受ける可能性もあるので、状況によっては父親の存在を隠しておいた方がいいこともあるでしょう。
子の父親に多額の借金がある場合
子の父親が、多額の借金を抱えている場合も注意が必要です。
胎児認知をしてもらうと、子には親の扶養義務が発生するため、将来的に親の借金の返済を求められる可能性がでてきます。
しかし、親の借金の返済義務は強制的に子に渡ることはありません。
将来的に、子どもの生活に余裕があったり、子が自ら親の借金返済をしたいと望むならば返済する必要はでてきます。
一方で、肩代わりしたくない場合は拒否することができるので、そこまで深刻になる必要はないでしょう。
子の父親が既婚者の場合
子の父親が既婚者の場合は、子の父親の奥さんに訴えられる可能性が非常に高いでしょう。
妊娠したということは、不倫をして不貞行為をしていたという証明になってしまうからです。
子の父親である男性が、独身を装ってあなたとのお付き合いをしていたならば話は別ですが、そうでもない限りは不倫となりますので慰謝料を請求される可能性があります。
一方で、子の父親が結婚していることを隠してあなたとお付き合いしていた場合、あなたが子の父親から慰謝料を取れる可能性もあるので弁護士に相談するとよいでしょう。
不倫でも胎児認知はしてもらえる?
不倫相手の子どもを妊娠し、未婚の母になってしまった方も少なからずいらっしゃるでしょう。
その場合でも、胎児認知をしてもらうことは可能ですが、不倫相手の子どもを未婚女性が妊娠した場合と、既婚女性が妊娠した場合とでは話が違ってきます。
- 未婚女性が既婚男性と不倫して妊娠した場合:胎児認知してもらえる
- 既婚女性が不倫相手の男性との間に子どもを妊娠した場合:胎児認知してもらえない
未婚女性が既婚男性と不倫して妊娠した場合
未婚女性が既婚男性と不倫をして妊娠した場合、胎児認知をしてもらうことは可能。
ただ、既婚男性が胎児認知に協力的ならばスムーズにいくでしょうが、胎児認知をするということは既婚男性の戸籍に後々子どもの氏名が記されることになります。
ということは、既婚男性の奥さんにはバレ、不貞行為をしたこともバレます。
既婚男性が独身を装ってあなたと結婚前提にお付き合いしていたなどのケースではない限り、奥さんから慰謝料請求される可能性も非常に高くなるでしょう。
既婚女性が不倫相手の男性との子どもを妊娠した場合
既婚女性が不倫相手の男性との子どもを妊娠した場合は、不倫相手の男性に胎児認知してもらうことは出来ません。
なぜなら、既婚女性が不倫相手の子どもを妊娠したとしても、法律上は夫の子どもと推定されてしまうのです(民法772条1項)。

東京弁護士会のHPに詳しいことが書いてあるので気になる方は調べてみてくださいね。
もしも、既婚女性の夫がDNA鑑定を行い、結果として自分の子どもでないことが明らかになったのであれば、親子関係を否定することはできます。
しかし、親子関係を否定するためには、「夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない」(民法777条)という点と、「嫡出否認の訴え」(民法774条、人訴法2条2号)の提起が必要になります。
胎児認知の手続き方法
胎児認知の手続き方法は、以下の順です。
- 市町村役場で認知届をもらう
- 胎児の母親が胎児認知の承諾をする(認知届のその他欄に記載する)
- 胎児の父親が母親の本籍地に提出をする
胎児認知の手続きに必要なもの
胎児認知の手続きを行う際に必要なものは下記になります。
- 認知届
- 母の承諾書(認知届のその他欄に記載でも可能)
- 胎児の父親の戸籍謄本1通
- 胎児の父親の本人確認書類(顔写真つきが好ましい)

「胎児認知 あなたの住んでいる地区町村」で検索すると、手続きに必要な情報がでてくるので、実際に調べてみるのが確実です。
胎児認知手続きに関する5つの注意点
胎児認知の手続きは、子どもの父親が市区町村役場に認知届を提出することで成立しますが、通常の認知と違うため注意点もお伝えしていきます。
- 認知届は母親の本籍地にある市区町村役場に提出
- 胎児認知は母親の承諾が必須
- 認知届に母親の捺印が必要
- 認知届の「認知される子」の欄については、氏名を「胎児」と記入
- 性別や生年月日などはわからないので空欄
補足として、胎児の段階で子どもの父親を知り得るのは母親だけです。
もしも、勝手に父親でもない男性が認知をしてしまうと、認知を取り消すことができないのです(民法785条)。
とはいえ、父親と胎児との間に生物学上の血縁関係がない場合は認知を取り消すことが可能ですが、取り消すためには「認知無効の訴え」という裁判を起こす必要があります。
認知を取り消す場合は非常に手続きが面倒になってしまうので、男性が勝手に胎児認知を行うことはできないのです。
胎児認知を拒否されたらどうしたらいいの?
胎児認知を胎児の父親に拒否された場合は、母親が胎児認知調停を申し立てることができます。
しかし胎児認知については、胎児の父親が任意で認知してくれない限り成立しません。

「絶対にこの人の子で間違いないのよ!」と女性側が主張しても、科学的に証明ができないので審判や裁判認知をしてもらうことができないのです。
出生前DNA鑑定という方法もありますが、結果が100%保証されているわけではないので、子どもが産まれてからDNA鑑定するのが確実でしょう。
まとめ

胎児認知は、胎児の父親が承諾しない限り強制的に成立させることはできません。
ですから胎児の父親が、父親としての責任から逃れようとしている場合は、子どもが産まれてから認知調停を申し立てるのが確実です。

胎児認知調停を起こしても、胎児の父親に拒否されたら不成立になります。お金や時間が無駄になってしまうので、私の経験上子どもが産まれてからの認知調停が確実です。
とはいえ、一番大切なのはあなた自身が納得できる選択をしながら、後悔のない妊婦生活をおくることです。
「どうしても出生届に父親の名前を書きたい!」「出生後すぐに養育費の請求をしたい!」など、強いこだわりがある場合は弁護士さんに相談してみましょう。