養育費とは

養育費とは、子どもが社会自立をするまでに必要とされる費用のことであり、子どもに与えられている権利です。
親権者であれば、子どもの権利として必ず請求することはできす。
相手が無職の場合や、収入がほとんどない場合は請求したからといって、養育費が必ず支払われる保証はありません。しかし、相手が安定したお給料を受け取っている場合は、養育費請求調停を申し立てることで受け取れる確率は高くなります。

勘違いされている方もいらっしゃるかもしれませんが、ひとり親で子どもを育てている親権者に与えられている権利ではございません。養育費はあくまで子ども全員に与えられている権利です。
- 離婚した
- 別居している
- 婚姻関係にない男女の子どもだが、認知をして法律上親子関係が認められている
などという場合、親権者でなくなった親であっても、法律上子どもの親として養育費の支払義務を負うのです。
Q1 養育費とは何ですか。
法務省HPより:“養育費”から引用
(A)
養育費とは,子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいいます。一般的には,子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し,衣食住に必要な経費,教育費,医療費などがこれに当たります。
子どもを監護している親は,他方の親から養育費を受け取ることができます。
なお,離婚によって親権者でなくなった親であっても,子どもの親であることに変わりはありませんので,親として養育費の支払義務を負います。

一般的には、養育費の受け取りは20歳までとなっておりますが、取り決めによっては大学卒業までなど、20歳を超えてからも支払ってもらうことは可能です。
養育費は誰が払うの?
養育費は、女性が払う場合もあれば、男性が払う場合もあります。
ですが、日本にはシングルファザーよりもシングルマザー(子どもを引き取って育てている親権者)が圧倒的に多いので、男性が払うケースがほとんど。

シンママが多い国なので、「養育費は男性が支払うもの」と認識している方もいらっしゃるかもしれませんが、父親が親権者の場合は母親が支払うことになります。

養育費の支払い義務はいつまで?
養育費の支払い義務は、一般的に子どもが20歳になるまでの間とされております。

私自身も、養育費請求調停を経て取り決めをした結果、養育費の受け取りは子どもが20歳になるまでとなりました。
成年年齢は、令和4年4月1日に20歳から18歳に引き下げられましたが、成年年齢の引き下げに伴い養育費の支払い義務も18歳までになるわけではないようです。
そして、法律上「○○歳までは養育費を支払わなければいけない」という決まりはありません。
ですから、話し合いや調停を通して、親同士で話し合い、受取期間を決めることになるのです。
養育費は子どもの権利であるのに支払われない5つの理由
養育費は子どもの権利であり、本来は全ての親が子どものために責任を持って支払うべきものです。
しかし、日本ではシングルマザーで養育費を受け取っている割合は4人に1人という異常な少なさで、シングルファザーは、ほぼ貰えていない状況。

「なぜこんなにも日本には養育費を支払わない人間が多いのか?」ということを、実際にシングルマザーになり、養育費請求調停を起こし、日常生活の中からみつけだした私なりの理由は下記の5つです。
- 養育費未払いに関する制度が機能していない
- 養育費の未払い自体に罰則が科せられない
- 養育費を受け取るためには時間とお金がかかる
- 養育費を請求していない
- 日本社会全体が養育費は誰のためのものかを認識していない

上記の理由が絡み合って、これだけ養育費の未払いが多い国になってしまったと私は感じています。
養育費未払いに関する制度が機能していない
養育費の取り決めをしているにも関わらず、支払わない親も数多く存在しています。

その一番の原因は、養育費の未払いに関する制度が整っていないからだと私は感じています。
無職の人間相手では、無い袖は振れないという残念な結果が待ち構えていることもありますし、給与が定期的に入ってこない親の場合は強制執行すらできません。

ひとりで子育てをしながら、養育費の請求をするのは非常に困難です。相手の年収がわからないと、審判がおりなかったり、調停が不成立になったりするケースもあるようです。
海外では養育費未払いの場合は、国が徴収する仕組みが出来上がっている国もあります。
日本でも住民税のように、養育費を支払っていない親には国が自動的に徴収する仕組みにできたらここまで養育費の不払いが問題になることはないのではないでしょうか。
養育費の未払い自体に刑事罰が科せられない
日本では、養育費を支払わなかったとしても刑事罰が科されることはありません。
しかし、養育費の差押えのために行われる「財産開示」を拒否等すると、刑事罰が科されます。
2020年の民法改正により6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されるようになりました
その他にも、虚偽の陳述を行った場合も刑事罰が科されますので、前科がつくことにならぬよう、しっかり養育費を支払ってください。
養育費を受け取るためには時間とお金がかかる
養育費を受け取るためには、時間とお金がかかります。
調停を申し立てると、早くて半年、遅ければ1年以上と、何年も時間がかかってしまうケースもあるのです。

私は実際に、弁護士に依頼して養育費請求調停を申し立てましたが、何度も心が折れそうになりました。ひとりで子育てをしながらの養育費請求はストレスになりますし、負担にしかならないとも感じました。
話し合いに応じない相手ならば尚更、調停を申し立てたり、弁護士に依頼したりする必要があります。
住所がわからない場合は、探偵などに依頼しなければいけないケースもあり、相手が逃げれば逃げるほどお金と時間がかかってしまうことも。
ひとり親はただでさえ貧困状態の世帯が多いので、「お金や時間をかけてまで養育費を受け取りたくない」と諦めてしまう人が多いのも現実です。

養育費を請求していない
養育費を受け取っていない人の中には、そもそも養育費の請求をしていない人たちもいらっしゃいます。
- 相手(親権者ではない親)と関わりたくない
- 住所や職場などの連絡先がわからない
- 経済的に困っていない
- 相手に頼らず子どもを育てようと決めている
- 自分のプライドから養育費を請求したくない
- 調停をして取り決めをしたが未払いのまま
など、さまざまな理由があるでしょう。

さまざまな理由があってシングルマザーになったのはわかりますが、養育費は子どもの権利。考え方によっては、請求しないことは親としての責任を果たしてもらわず、子どもの権利を親が自ら放棄していることでもあります。
子どもに与えられた権利を、親の感情やプライドで放棄することは果たして子どもにとっていことでしょうか。

私は親としての責任を相手に果たしてもらうこと、そして養育費の支払いから逃げる親を野放しにしないことも大切だと考えております。養育費は当たり前に支払い、当たり前に請求して受け取れる世の中になってほしいことを願うばかりです。
日本社会全体が養育費は誰のためのものかを認識していない
日本のシングルマザーは、4人に1人しか養育費を受け取ることができていません。
シングルファザーの場合は、ほぼ受け取っている人がいない状況です。
その理由は、今までお伝えした5つの理由があるとは思いますが、日本社会全体が養育費は誰のためのものかを認識していないと感じるからです。
- 「自分でひとり親になることを決めたくせに養育費に頼るな!」
- 「養育費に頼らなくても経済的に自立しましょうね!」
- 「あの人、別れた奥さんに養育費渡してるんだって、偉いわね~!」
- 「養育費なんて請求するだけ無駄、それなら自分で稼いだ方がマシ!」
このような反応をする日本人がほとんどではないでしょうか。

上記のような言葉がでてくる時点で、養育費は子どもが当たり前に受け取れるお金だという認識はないのでしょう。責めるべき相手・責任を取らせるべき相手も違います。恐らく養育費は生活費くらいにしか思われていないのだと感じます。
養育費を受け取る5つのメリット

シングルマザーである私自身、養育費を受け取るメリットは大きく下記の5つのことがあると感じています。
- 子どもにとって必要なお金を確保できる
- 親としての責任を取らせてあげられる
- 子どもの自己肯定感を上げられる
- 子どもと一緒にいられる時間が増える
- 仕事の選択肢が広がる
子どもにとって必要なお金を確保できる
養育費を受け取る一番のメリットは、将来的に必要な子どもの学費などとして貯金することができること。

私自身、子父からの養育費は子ども名義で養育費専用口座を作って振込んでもらっています。
個人的に感じていることですが、子父名義でお金が振り込まれることで、「子どもに与えられているお金・子どものためのお金」という認識が強くなります。
その結果、普段の生活の中では絶対に手をつけないようにできますので、ある程度まとまった金額を貯金しておくことが可能になります。
親としての責任を取らせてあげられる
養育費は子どもの権利で、親が果たすべき責任です。
そして日本という国でその責任を果たしてもらうためには、親権者が養育費の請求を求めるケースがほとんど。

本来であれば、未婚・離婚に関わらず子どもの権利である養育費を請求されなくても支払うのが理想ではあります。しかし、そのような考えの方は非常に少ないので、養育費請求調停などを申し立てる必要があるのが現実です。
子どもと離れて暮らすのならば、唯一子どもにできることは養育費を支払うこと。
その責任を取らせてあげるという感覚も、親権者として大事ではないでしょうか。
子どもの自己肯定感を上げられる
養育費を受け取ることで、子どもが父親、もしくは母親と一緒に暮らせていなかったとしても、「私のために毎月養育費を振り込んでくれているんだ」と実感することもできます。
一方、養育費を受け取らない場合は、「一緒に暮らすこともできないし、養育費すら支払わないなんて…私のことなんてどうでもいいんだ」と思われてしまう恐れがあるでしょう。
子どもの性格や、育った環境にもよるとは思いますが、子ども目線で考えると養育費を受け取るデメリットはみつかりません。
子どもに「離れていてもパパ(ママ)はあなたのことをしっかり想って、考えてくれているのよ」と伝えられるのも養育費を受け取るメリットの1つでしょう。
子どもと一緒にいられる時間が増える
養育費を受け取ることで、子どもと一緒にいられる時間が増えます。

養育費は3~6万円ほど受け取っている家庭が多いようです。ひとり親が子育てをしながら3~6万円を稼ぐということは、子どもと一緒に過ごす時間を犠牲にしなければなりません。
ですが、養育費を支払ってもらうことで、受け取る金額分の勤務時間をセーブすることも可能になります。
仕事の選択肢が広がる

先ほどもお伝えしたように、養育費を受け取らないと自分ひとりの経済力しか頼るものがありません。
ですから、正社員で働いたり、派遣社員だとしてもフルタイムで勤務する必要がでてくるでしょう。
一方、月に5万円でも養育費を受け取れていたら、パートタイムで働くという選択肢がを考えられるケースもあります。

子どもとの時間を増やしたいのなら、養育費を受け取るメリットは非常に大きいです。ご自分の考え方や子どもとどのように過ごしていきたいかをよく考えて養育費の請求を行いましょう。
まとめ
養育費はひとり親に与えられた権利ではなく、子どもに与えられた権利だということは紛れもない事実です。

養育費の受け取りで悩んでいるひとり親の方は、今回お伝えしたような考え方があることも知った上で決断すると、もしかしたらご自分の納得のいく結果に収まることもあるかもしれません。
どんな考え方であろうと、子どもにとってなにがベストな選択かを考えながら、親子共々心身共に健康で幸せになるのがなによりも大切なことです。

私が今回お伝えしたことは、1つの意見でしかありません。たくさんの意見や考え方がある中で、あなたにしっくりくるものを見つけて下さい。